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エピソードがあります。
私たちが耕さない田んぼに、それも草の中に稲の苗を植えているのを見ていた近所の方が、この地区で農業をしている義兄に、「おまんの弟さんは、 去年の田へ耕しもせず稲株に苗を植えよるが、行って教えてやらんかよ、そして耕してやりや。」(ここは土佐の方言です)と親切に伝えてくれた方がいました。
後は、水管理と草刈の毎日が続きます。広い草刈場で連れ合いと二人して手鎌で刈っても刈っても追っつかず、刈払機を6万円も出して購入しました。
「百姓するには機械はいらぬ。スコップ一丁、鍬一丁、 鎌の二本もあればよい。」と勇んでいましたが、残念残念。刈払機の働き者には脱帽しました。
13qの道のりの田んぼへ毎日通いました。先にも述べましたが、近年にない日照り続きで水不足の年でしたが、この集落は、天気は良いことは稲に良く、
ミネラル水をたっぶり吸収したこの上ない元気なお米を育てることになりました。
早稲、中手、晩稲と、順次色づく秋を迎えました。いよいよ、稲刈りです、早稲は手鎌で刈り、(はで)掛けをしました。時々農機具店が展示会を催します。
その展示場に立ち寄った折、1万円の中古のバインダーを見つけ、購入しました。ものはためしと早速中手を刈って見ると、これが調子の良い働き者で、
中手は一日で刈り終えました。晩稲もバインダーの助けをかりることになりました。
半月ほど乾かし、脱穀です。足踏み脱穀機は、大阪の大型ゴミで捨ててあった物を持ち帰っていました。この脱穀機の出番だと嬉しさを密かに感じていたのですが、
バインダーを買ったA店のオーナーに「北村さん、中古で安い、ええ(良い)ハーベスターが有るが、買わんかよ。」と声を掛けられ、刈払機、
バインダーの働き者に脱帽していた小生、またまたAさんの誘惑に負けて10万円の出資となりました。でも、脱穀は天気の良い日に一日で終えました。
収穫量360s。1年は有に食べられる量です。。新米を頂くには、白米にしなければならない。それには、精米機が必要です。精米機のことは川口先生も、
「精米機はやむを得ないもの」と言われていたので、精米機は購入することにし、籾すりと精米が出来る新品を18万円で購入しました。
早速新米を、それも川口先生の作られている「豊里」を頂くことにしました。まず、籾すりにした玄米を何度も何度も掴んでその感触を味わいました。更に、
白米にしたものを掴んだ感触は、玄米とは又違ったグググっと手の中で声を出し、溢れないこの感触は、この半年の労働の喜びでした。夕ご飯の支度、夕食7時に合わせ、
5時に米研ぎをしてスイッチON。定刻に炊き上がり、10分蒸らす。おかずは、秋ナスは嫁には食わすなと言われるナスの糠漬け一品。 よそったご飯に「いただきます」
の一礼。お茶碗の湯気を鼻から何度も吸い込み、香りを味わい、そして初めて口に入れる。百姓・自然農、自分の労働に満足して生きて行く一歩、この半年の労働が凝縮した喜びです。